ペイクラウドホールディングスAIハッカソン2024 優勝
2024/06/29
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ペイクラウドホールディングス主催のAIハッカソン2024に参加し、17チームの中で優勝することができました。現役千葉大学生、現役慶應義塾大学生と3人でチームを組み、メール配信における迷惑メール判定を防ぐためのGPTsを開発しました。
ハッカソンの概要
今回のハッカソンは、ChatGPTのGPTsを活用したビジネスソリューションの開発を競うものでした。参加チームは17チームでそれぞれが独自のアイデアを持ち寄り、限られた時間の中で実装と発表を行いました。私たちのチームは、メール配信事業者が直面する「迷惑メール判定」という実務的な課題に着目し、解決策を提案しました。
解決したい課題
メールマーケティングやメール配信サービスにおいて、送信したメールが受信者の迷惑メールフォルダに振り分けられてしまうことは、ビジネス上の大きな損失につながります。特に以下のような問題が深刻です。
- 迷惑メール判定による開封率の低下: せっかく作成したメールが届かない
- 送信者レピュテーションの悪化: 一度迷惑メール判定されると、以降のメールも届きにくくなる
- 事前チェックの難しさ: 実際に配信してみないと、迷惑メール判定されるかわからない
これらの課題を解決するため、私たちは「送信前に迷惑メール判定のリスクを診断・改善できるツール」の開発に取り組みました。

開発したGPTsの3つの主要機能
私たちが開発したGPTsは、3つの主要機能を持っています。それぞれが異なる角度から迷惑メール判定のリスクを低減します。
1. 迷惑メールワード検出機能
メール本文に含まれる「迷惑メールと判定されやすいワード」を自動的に検出します。この機能は、長年のメール配信データとGPTsの自然言語処理能力を組み合わせることで実現しました。
検出対象の例:
- 金銭関連: 「即日入金」「完全無料」「今すぐ稼げる」「高収入」
- 緊急性を煽る表現: 「本日限り」「残りわずか」「今すぐ」「急いで」
- 誇大広告的表現: 「100%保証」「絶対」「確実に」「誰でも簡単に」
- 個人情報要求: 「パスワード入力」「口座番号」「暗証番号」
これらのワードが検出された場合、GPTsは代替表現を提案し、より安全な文章への書き換えをサポートします。単にワードを検出するだけでなく、文脈を理解した上で適切な代替案を提示できる点が、従来のフィルタリングツールとの大きな違いです。
2. メールアドレススペルチェック機能
送信先リストに含まれるメールアドレスのスペルミスを検出します。この機能の重要性は、多くの人が見落としがちなメール配信の「落とし穴」に関係しています。
なぜスペルミスが危険なのか:
存在しないメールアドレス(スペルミスを含む)に送信すると、バウンス(配信エラー)が発生します。バウンス率が高いと、メール配信プロバイダーに対して「この送信者は質の低いリストを使っている」と判断し、送信者レピュテーションを下げます。その結果、スペルミスのない正しいアドレスへの配信も迷惑メール判定されやすくなるのです。
検出例:
example@gnail.com→gmail.comのスペルミスuser@yahooo.co.jp→yahoo.co.jpのスペルミスcontact@outloook.com→outlook.comのスペルミスinfo@hotmial.com→hotmail.comのスペルミス
GPTsは主要なメールプロバイダーのドメインパターンを学習しており、高精度でスペルミスを検出し、正しい形式を提案します。
3. テスト配信機能
今回のキラー機能が、このテスト配信機能です。ユーザーがメール本文を入力すると、GPTsが実際にテストメールを配信し、そのメールがGmailなどの主要メールサービスで迷惑メール判定されるかどうかを検証します。メーラーを使用せずともそのまま自然言語で操作し、メール送信まで完結できる点がミソです。
テスト配信のフロー:
- ユーザーがGPTsにメール本文を入力
- GPTsがメール内容を分析
- アララメッセージAPIを通じてテストアドレスに配信
- 複数のメールサービス(Gmail、Outlook、Yahoo!メールなど)で受信状態を確認
この機能により、本番配信前に実際の配信環境での振る舞いを確認できるため、リスクを大幅に低減できます。

技術的な実装のポイント
今回の開発で最も技術的に工夫した点は、GPTsとアララメッセージAPIの連携です。通常、GPTsは会話型のインターフェースに特化していますが、外部APIと連携することで実際のアクションを実行できるようにしました。
API連携の実装
GPTsのActions機能を使用して、アララメッセージのREST APIを呼び出すカスタム関数を実装しました。以下のような処理フローを構築しています:
- 認証処理: アララメッセージAPIのOAuth認証を実装
- メール生成: ユーザー入力からメールのヘッダーと本文を構造化
- API呼び出し: 構造化されたデータをXML形式でAPIに送信
評価されたポイント
審査員から高く評価されたポイントは以下の通りです。
1. 実務的な課題への着目
「迷惑メール判定」という、実際のビジネスシーンで多くの企業が直面している課題に着目した点が評価されました。AIハッカソンでは技術的な新規性が重視されがちですが、実際のビジネス価値を提供できるソリューションであると考えています。グループ企業であるアララ株式会社がメール配信事業を展開していることもあり、実務的な視点を持つことができたのが強みでした。
2. 複数機能の統合
単一機能のツールではなく、「ワード検出」「スペルチェック」「テスト配信」という3つの異なる角度からアプローチする包括的なソリューションを提供できた点が評価されました。それぞれの機能が相互に補完し合い、より高い価値を生み出しています。
3. 高度な技術実装
GPTsとアララメッセージAPIの連携という、技術的に高度な実装を限られた時間内に完成させた点が評価されました。特に、実際にメール配信を行うという「動くプロダクト」を提示できたことが大きかったと思います。

おわりに
ペイクラウドホールディングス主催のAIハッカソン2024で優勝できたことは、チームメンバーとの協力、そして実務的な課題に真摯に向き合った結果だと考えています。
AIは日々進化しており、活用できる幅も広がっています。しかし、私自身も学び続けない限り、取り残されてしまうと痛感しています。
今後はAIそのものの開発にも挑戦し、より深い理解と技術力を身につけていきたいと思います。
最後に、このような貴重な機会を提供してくださったペイクラウドホールディングスの皆様、そして一緒に開発に取り組んでくれたチームメンバーに心から感謝いたします。